(今の状況)
とあるノートの広告をすることになったYASUさんと僕は、
広告表現を考えるべく色々と打ち合わせをしているところです。
*100人の水着の女子大生
次の打ち合わせの時、放送作家のYASU(全角)さんは、
例の「フィールドノート」を自分で購入して持ってきてくれた。
YASUさんはこのノートを手に入れるまでに、
どれだけ苦労したかという話を長々としてくれて、
とにかくどこにも売ってなかったとか、とある百貨店に電話で問い合わせたら
担当の人がすごく一生懸命探してくれて感動したとか、色々言っていたけど
要は、結局は僕らの知ってる、このECサイトからしか買えなかったということらしい。
ナレッジストックノート | こだわりステーショナリー Smart Work Shop(スマートワークショップ)
YASUさんに見せてもらうと、思ったよりも小さい。
片手で持って、立ったまま書けるのだから、まあそうなんだろうけど。
たしかに手にすると、ぴったりとフィットして気持ちいい。
表紙はしっかりした堅さがあって、曲がったりしない。
うっすらとドットが印刷されていて、文字だけじゃなく
図とか絵とかを書くのにも便利そうだ。
YASUさんは、必死に探しまわってやっと手に入れた
小さなノートを愛おしそうにを見つめている。
(さっさとネットで買えばよかったんだけど、送料がネックだったそうだ)
そんなYASUさんに「リサーチについての思い出」を聞いたら
若い頃、とあるテレビ番組のために、水着の女子大生を
100人集めなければいけない、という難題に直面した話をしてくれた。
彼はとにかく色んな女子寮に電話をかけまくったが、誰も相手にしてくれない。
しかし、何度も何度も寮長やまとめ役の女子大生に電話でお願いし続けた結果、
締め切り直前に、一気に電話が鳴り、なんとか100人集めることができたそうだ。
今そんなことしたら、いやがらせとかストーカーとかで
大問題になるんじゃないかな、と思ったけど、黙っておくことにした。
*がっかりさせたくない
ところで、YASUさんは、この十数年間、
障害のある人や介護が必要な人たちと、そのサポートに関わる人々の
活動を伝える番組に関わり続けてきた。
残念ながらこの番組は今月終了してしまったけど、
彼は粘り強い取材を地道に行い続けて、番組を長年制作してきた。
YASUさんには、こんな持論がある。
「取材を受けた本人を、がっかりさせたくないんです」
報道番組も、ドキュメンタリー番組も、必ず制作者の意図が入ってしまう。
どうやったら面白くなるか?どうやったら涙を誘えるか?そして、どうやったら視聴率を取れるか?
しかしそうやってできた番組を、取材を受けた本人が見たら、がっかりするかもしれない。
自分はこんなにかわいそうな人間じゃない、とか、そんなに立派な人間じゃない、とか。
だからせめて、本人がそれを見た時に、がっかりしないような番組を作りたいんだと。
なぜなら、とYASUさんは話す言葉に力を入れた。
「この人たちの力になりたい、と思うことで、視点が変わってくるんです。
どんな表情を撮るのか。どんなシーンをピックアップするのか。
僕は取材する人に言います。テレビに映るあなた方の姿は
少し別のものとなってしまうかもしれない。
だけど、みなさんをがっかりさせるようなことはしません、って」
*広告の限界
広告制作で大切なのは、対象となる商品やサービスがもつ魅力を「色んな視点から」探すこと。
面白い視点が見つかったら、そこから発想を思いきり膨らませて表現する。
僕はそう教えられてきた。
だから、広告表現というのは視点をしぼりこむことであり、
余計な情報をそぎ落とす作業でもある。
これには理由があって、テレビ番組というのは30分とか1時間とか
それなりのボリュームがあるけど、CMはたったの15秒とか30秒しかない。
おまけに視聴者は、広告なんて見たくない。
なので、広告制作者は訴求点をしぼりこんで、必死に注目を浴びるための努力をする。
このノートがもっとも売れるための魅力は何か?どうすればそれをアピールできるか?
「16,000人が選んだ究極のノート!」
「5mmドットが自由なアイデアを生む!」
「サラッサラの書き心地が右脳を刺激!」
「立ったままでも余裕でメモがとれる!」
「電池が切れる心配は一切ナシ!」
このように、わずかな時間で伝えられる商品の魅力というものは
デフォルメされたものにならざるをえない。
それでも商品が売れるなら、広告主は「がっかりしない」かもしれないが
全然興味のない広告を見せられた人や
商品を買ってみたらイメージと違ってショックを受ける人の
「がっかり」までも担保するのは難しい。
おまけに今、ステマだとか、広告スペースが大きすぎるとか
マスゴミだとか、広告は何かと目の敵にされている。
僕だって、YASUさんみたいに、かっちょいいことを言ってみたい。
せめて、このブログを読んでくれている
あなたにだけは「がっかり」してもらいたくない。
さて、どうしたものか。
(次回予告:だけど、とりあえず結論を出さなきゃいけない)